血潮がおどる獅子舞のメッカ”氷見”つきせぬ富山湾の旬味と里山の幸につつまれた氷見市は豊かな
恵の里というだけではなく、時を超えて伝えられる獅子舞の宝庫。今も110カ所以上の地区で、個性に
みちた伝統の獅子舞が踊り舞う、まさに日本有数の「獅子舞の里」といえるでしょう。
 「ひみ獅子舞ミュージアム」パンフより引用
百足獅子
(むかでじし)
 春秋の祭礼で舞われる氷見獅子は「百足獅子」。”カヤ(胴幕)”
(麻布や木綿布に牡丹唐草文様・巻き毛文様などを染めぬき、
獅子頭の後ろにつけられる)の中に、カシラ(獅子頭)持ちを含めて
5〜6人のカヤ人足(若衆)が入って、巧みな動きを演出します。
カヤは文様なしの鮮やかな、”緋色”を用いる地区もあり、氷見の
山里、町に彩りの華を咲かせます。
二日間の熱演  一般的に、獅子舞は春秋の祭礼日の午前中または午後からはじ
まりますが、おおよそのスケジュールとしては
@<<出立ちの宿>>足拵(あしこしら)えと出立ちの獅子舞
A<<地区の神社>>祭典と修祓、奉納獅子舞
B<<村マワシ/町マワシ>>露払いの獅子舞・祝儀返礼のハナ獅子舞
C<<中入り宿(獅子舞宿)>>獅子方一服と宿返しの獅子舞
D<<村マワシ/町マワシ>>露払いの獅子舞・祝儀返礼のハナ獅子舞
E<<入宮の宿>>獅子殺し
 各所には数軒の宿が設けられ、村マワシや町マワシの途中、その
年嫁や婿を迎えた家ではデカイハナ(高額の祝儀)が打たれ、各青
年団は「ヨソブリ」や「タチフリ」「タルトリ」など、とっておきの演目を
演じこれに応えます。
大天狗・小天狗  天狗装束の上衣(ソウ)は、長い袂(たもと)で、地模様のある緋色が
一般的。この上に、梅鉢紋や村の神社の紋などを刺繍した胸当て
(黒繻子や黒ビロード)をつけ、緋・浅葱・藍・黄・紫の色とりどりのタ
スキをかけます。そして下衣(カルサン)は、華やかな錦地の野袴
ふうがよく見かけられます。これに腕ぬき・手甲(下衣と同布地)を
つけ、足は白足袋にワラジ。頭には豪華な烏帽子のカブリ物(ヨボ
シ/ヨボス)。また、ズッカウソというザンバラ髪のカブリ物の天狗が
見られる地区があります。ヨボシをかぶる鼻高面の「大天狗」、
素面にズッカウソの天狗を「小天狗」と呼ぶ地区もあります。
太鼓台  氷見の獅子舞の特徴の一つは立派な太鼓台があること。櫓状の
屋台は幅1m、高さ1m余りの強固なもの。その上に擬宝珠をのせ
た高欄をめぐらし、高さ1m、幅1.4m程度の「鳥居形」と御神灯と
書かれた2基の「行灯」が掲げられ、その下方に「鋲打太鼓」が置
かれます。屋台中央には高さ約1.8mの「若松」と各青年団や町
名などを記した緋ラシャ地の「幟旗」が立ちます。囃子方は太鼓の
ほか、”チャンチクリン”と呼ばれる「鉦」と、塗りの「横笛」からなり、
地区によっては「縦笛」も使われます。
採物(とりもの)  獅子に対する時の採物は、先端を鉾形にし、鉾刃の根元に五色
の房をつけた木製や竹製の棒(長さ約91cm〜約106cm)、いわ
ゆる「天狗の棒」が一般的。しかし地区によってタイプも変わり、千
差万別です。演目別に「刀」や、約1.8mの「六尺棒」や木製の
「長刀」が使われますが六尺棒を使うのはズッカウソの天狗だけ
です。また木製の柄に五色の紙房などをつけた「フサ」・「ゴヘイ」
と呼ばれるものや「笹束」を持つ地区もあります。
演目


 氷見獅子は、それぞれの地区によって演目名や演目の順番、演
技の内容が異なりますが、約20種以上ある演目は同種同称が多く
、一般的に舞われるのはだいたい10種ほどです。
【1】ヒトアシ
【2】フタアシ
【3】バンガエシ(バイガエシ・バイアシ)
【4】ギオンブリ(ヤツブシ・ハラホラ)
【5】キョウブリ(ジンチョの獅子舞)
【6】キョウブリクズシ(キョウブリカエシ・ナラブリ・ナガフリ)
【7】サンクズシ
【8】カイチュウ(イリガシ)
【9】ヨッサキ
【10】シチゴサン
【11】タチフリ
【12】ナギナタ
【13】ホウダツ
【14】サンサン
【15】ドコドコ
【16】タルトリ
【17】ヨソブリ(イソブリ・ササブリ)
 などがあり、最後にその年最後の獅子舞として「獅子殺し」が演
 じられます。
                      
                      氷見・富山の獅子舞

 氷見の獅子舞は、カシラとカヤ(胴幕)からなる獅子方と、獅子と対峙する天狗方の
所作と芸態、演目の名称に加えて、太鼓や笛・鉦(カネ)からなる囃子方のほか、坂道の
多い山間部の幾つかの地区を除いて太鼓を載せる太鼓台(タイコンダイ)が付随しているこ
となど、その独特のスタイルから「氷見獅子」と類型化されています。
 
 富山県内の獅子舞の大まかな分布は、県東部では「金蔵獅子」や「下新川獅子」な
どの「二人立ち獅子」が広まっている一方、県西部では「氷見獅子」のほか、「加賀
獅子」の影響を強く受けた「砺波獅子」や射水平野を中心とする「射水獅子」など、
カヤの中に5・6人から多いところでは9人あまりもカヤ人足が入る「百足獅子」が
色濃く伝承されています。